2015年06月15日
北朝鮮兵士が軍事境界線越え韓国入り、「脱北」意思示す、南北衝突なし
 北朝鮮の朝鮮人民軍兵士1人が南北軍事境界線を通過して韓国側に渡ってきました。
 聯合ニュースによると、この兵士は本日午前8時ごろ、韓国と北朝鮮を隔てる南北軍事境界線(江原道・華川付近)を徒歩で越えてきたそうです。


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 韓国軍当局は、兵士を非武装地帯(軍事境界線に沿って南北それぞれ2キロほどの幅の区域)の韓国側区域内の監視所(GP)で見つけ身柄を保護、関係機関に引き渡しました。
 階級は最も低い「下戦士」で、年齢は19歳とみられ、「韓国入りしたい」という意向を確認したそうです。

 兵士は調査に対し、軍で日常的な暴力を受け、北朝鮮の現実に不満を抱いて韓国行きを決めた、と述べているそうです。

 韓国軍が兵士の身柄を保護する際、南北間の緊張が一時高まったものの、銃撃戦などの衝突はありませんでした。


 どうですか。

 韓国で暮らす脱北者の中で元兵士も結構な数に上り、軍人出身者でつくる脱北者団体まであるぐらいです。

 軍事境界線を歩いて越え脱北してくる兵士も、たまにいます。

 2012年10月にも同様なケースがあり、当時、軍事境界線を越えてきた北朝鮮兵士は、韓国軍の最前線部隊の兵舎を「コンコン」とノックし、ドアを開けて出てきた韓国軍兵士に脱北の意思を示しました。
 この時、韓国軍側が北朝鮮兵士が接近していることに全く気づかなかったことが分かると、杜撰な軍の監視体制に世論やメディアから批判が噴出しましたね。

 これは、韓国で「ノック事件」として有名です。


 話がわき道に逸れましたが、一般に脱北者が韓国入りした場合、「脱北者を偽装したスパイや工作員」の可能性も排除できないため、韓国政府は明確に「亡命」とは言いませんが、今回のケースに関しては韓国に「亡命」してきたのは十中八九間違いありません。


 通常の場合、脱北者の身柄は韓国の情報機関「国家情報院」に引き渡され、同院や統一部など関係当局の担当者で構成される合同チームが時間をかけて審問を行い、北朝鮮での身分や生活、亡命動機などについて詳しく聞き出し、その陳述内容にウソや矛盾がないかどうかを厳しくチェック。

 この審問は、北朝鮮情報の収集(今回のケースは兵士であるため軍事情報中心でしょう)と同時に、スパイや工作員でないことを確認する「スクリーニング」の意味があります。


 また、脱北者の中には、自分の価値を少しでも高く見せようと、自分が重要人物の家族や親戚だとか、核・ミサイルなどの機密情報を知っているとか、様々なウソや誇張を交えて話をする者も結構いるため、関係部署が保有している情報と照合し、また必要ならば既存の脱北者から人物情報の提供も受けながら、陳述をチェックするそうです。

 この審問作業は、地味ですが、韓国政府にとって想像以上に重要な仕事であることが分かると思います。



 北朝鮮政府高官や軍幹部、国家安全保衛部幹部などの重要人物でなければ、通常は審問終了後、統一部傘下の脱北者教育施設「ハナ院」に入所させられ、数カ月間にわたり韓国生活に適応するために必要な教育や訓練を受けます。

 同院修了後には、アパートや生活支援金が支給され、韓国での暮らしが本格的に始まりますが、常に地元の担当警察官と連絡を取りながら、当面は事実上の「監視」を受けることになります。


 思えば、脱北者の待遇も時代とともに随分変わりました。

 東西冷戦時代は、韓国と北朝鮮の経済格差も今ほど極端に開いておらず、脱北者の数も少数だったため、韓国側では「貴重な存在」として金銭面でも相当優遇されました。

 しかし、韓国の経済力が北朝鮮の30倍以上となり、「体制競争」は事実上、勝負がついた状況では、よほどの重要人物でなければ、脱北者の政治的な利用価値はありません。


 今も継続的に最新の内部情報を収集すると言う意味では必要なのですが、2000年代に入って脱北者が急増したこともあり、その「情報価値」も下落傾向。

 韓国政府は一応、表明上は「脱北者保護は人権問題」として積極的な韓国受け入れを進めていますが、実際は「こんなに沢山来なくてよい」というのが本音。
 北朝鮮から中国に脱出し、第3国に滞在しながら韓国入りを目指す脱北者が多いですが、脱北者支援のNGOの間では「現地の大使館が非協力的だ」という不満の声が絶えません。

 まあ、ある意味で「厄介者扱い」されているのが実情ですね。

 
 さらに、韓国定着のために支給される支援金なども昔に比べ、相当に減額されている上、韓国人並みの賃金を得られるような仕事に就くのは現実的に難しく、平均所得は一般韓国人の平均よりはるか下。

 韓国統一部と脱北者支援財団が昨年実施した調査の結果、賃金労働者の脱北者は月平均147万1000ウォン(約16万円)の所得を得ており、韓国人労働者の平均所得の7割にも満ちません。

 経済的な困難や寂しさなどの理由で「死にたい」と思っている脱北者は、調査対象者の20%以上だとか。


 それでも67.6%が「韓国の生活に満足している」と回答しているものの、脱北前に想像したのとは違う韓国の現実に失望し、北朝鮮時代が懐かしくなって、中国経由で北朝鮮に戻ってしまう人も希にいます。
 

 ところで、「脱北者は『亡命者』ではなく、なぜ『脱北者』なのか?」という素朴な疑問を持つ人もいるかもしれませんね。

 「これだ」という定義はないようですが、要は「亡命者は政治的に迫害されて国を逃れた人」という意味合いが強いのに対し、ほとんどの脱北者は「食糧難で苦しい」とか、「韓国ドラマの闇ビデオを観るなどし、韓国の豊かな生活に憧れた」という動機が多いようで、要は「経済難民」だからです。


 もちろん、数年前に死去した黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記のような人物は別。

 彼は、韓国政府から明確に「亡命者」として扱われ、日米韓のメディアもそのように報道し、国際社会の認識も「亡命」で一致していると言えるでしょう。

 現在でも政府の官僚や国家保衛部要員などには「亡命」に該当するケースもあるでしょうが、最近はよほどのことがないと「亡命」とは言わなくなっていますね。


 いずれにしても、脱北者にとっては、1990年代半ばまでが「最良の時代」だったと言えるでしょう。

 東西冷戦の終結後、時代の変化の波に押され、韓国と北朝鮮が国連に同時加盟したのは1991年9月。

 それ以前は南北双方が「朝鮮半島国家」としての正当性を激しく競い合っており、韓国にとって「北朝鮮を捨てて韓国亡命を選んだ脱北者」は、国際社会に韓国の優位性をアピールする宣伝戦の道具として非常に意味ある存在だったわけです。


 資本主義、特に厳しい競争社会である韓国で、「金王朝」の社会体制しか知らない脱北者たちが成功するのは非常に困難。
 韓国で生まれ育ち、一流大を出た生粋の韓国人でさえ、就職先がないのですから。

 確かに脱北者の中にも、記者や研究員、医師になったり、ビジネスで成功した人がいますし、与党セヌリ党の国会議員になったエリート層出身者も有名ですが、大部分は非正規労働者などとして、韓国社会の下層で必死にもがいているのが現実です。


posted by 永遠の旅行者 at 16:59 | ソウル ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 金正恩の北朝鮮、愛憎渦巻く韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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