2015年03月09日
米大使襲撃は安重根の伊藤博文暗殺と同じ「義挙」と北朝鮮 韓国内の保革対立あおり揺さぶる狙いか
 北朝鮮の対南宣伝機関、祖国平和統一委員会が8日、書記局報道の形で、リッパート駐韓米国大使の襲撃事件について「米帝の戦争策動に反対する義による行動がテロならば、日帝の朝鮮侵略に反対し、伊藤博文を処刑(暗殺)した安重根ら反日愛国志士の義挙も日本反動が冒とくしているようにテロと呼ばなくてはならないのではないか」と指摘しました。
 聯合ニュースなどが報じました。

 北朝鮮は要するに、大使を襲撃した金基宗(キム・ギジョン)容疑者について、伊藤博文を暗殺した安重根と同様な「義挙」を行っただけだ、という趣旨の主張を展開しているわけで、韓国政府は「愛国烈士の高貴な犠牲を汚すものだ」と反発しています。


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 北朝鮮はなかなか鋭いところを突いてきましたね。

 安重根は、韓国では「義士」という敬称をつけて尊敬され、「暗殺」行為に関しても国民の間で是非の議論はなく、無条件に「よくやった」という認識です。

 現実はどうあれ、いわゆる「抗日英雄」の中で、最も「偉大な人物」という扱いです。


 北朝鮮にとって、朝鮮半島で唯一の正統政府は、金正恩第1書記を最高指導者とする北朝鮮の政権です。
 韓国の朴槿恵政権は「米国の傀儡」であり、朝鮮半島の南半分は米国の「植民地」状態になっている、というのが表向きの立場です。


 こうした立場からすれば、韓国を「植民地」支配する米国の大使を襲撃する行為は、かつて朝鮮半島を保護国化しつつあった日本の元老政治家で、韓国統監を務めた伊藤博文を襲撃する行為は、まったく同じ「愛国者の義挙」という理屈になるのです。


 まあ、北朝鮮としては、こうしたレトリックを使って、韓国内の保守勢力と革新勢力の対立をあおり、民族意識を刺激して、米韓同盟をゆさぶる狙いがあるのは間違いありません。

 折しも朝鮮半島有事に備えた米韓合同軍事演習が開催中ですが、韓国が米国の軍事力に依存して北朝鮮を圧迫することを疑問視する方向に韓国世論を導きたいという思惑もあるのでしょう。


 いずれにしても、北朝鮮は今後、金基宗容疑者を「抗米の義士」と規定するとみられ、安重根と同列視することで韓国民の「反日情緒」や「民族感情」をくすぐりながら、利用していくつもりのようです。


 現時点では、こうしたレトリックに対し「何をバカなことを」と思うかも知れませんが、韓国民の間には「反日情緒」はもちろん、何とは何しに「米国は嫌いだ」という感情がくすぶっています。
 特に革新勢力の中には、朴正煕、全斗煥、盧泰愚と続く軍事政権時代、韓国政府が民主化運動を弾圧するのを米国が黙認したり、手助けした、という「恨み」(誤解による逆恨みの面もありますが‥)のような感情を抱いている人は、1980年代に学生運動を経験した世代を中心に結構います。

 さすがに暴力に訴えることはなくても、金基宗容疑者と同じように、「米国のせいで(朝鮮半島は)南北に分断された」「米国が南北関係改善を妨害している」と考える人は意外に多いように感じます。


 確かに今は、リッパート大使の早期回復を祈念する「国民的運動」が盛り上がり、、韓国メディアは「事件によって却って米韓関係が強化された」と自画自賛しているのも、表面的に見れば頷けるような雰囲気です。

 しかし2002年大統領選で、米軍車両によって韓国人女子中学生がひき殺された事故をきっかけに広がった反米感情を背景に盧武鉉氏が当選したり、2008年に米国産牛肉の輸入禁止解除反対を求める大規模集会・デモが繰り返されたことでも分かるように、何かをきっかけに「反米」的な雰囲気が広がる危険は常にあると思われます。


 2011年の東日本大震災後に韓国で国を挙げた日本支援の動きが拡大しましたが、竹島(韓国名・独島)問題をめぐる軋轢や慰安婦問題再燃で、日韓関係は一気に冷え込み、現在に至っているのを見れば、米韓関係の方もそれほど安心できるものではありませんね。


 最近、日中韓の歴史問題をめぐる対立に関するシャーマン米国務次官の発言について、韓国では「日本の肩を持つのか」と強い反発が巻き起こりました。
 特に第2次大戦終結70年の今年、「米国は歴史問題で日本に荷担している」と韓国人が思い込めば、激しい反米感情が噴出する危険は十分にあると考えられます。


 韓国では一般国民はもちろん、政治家やメディア関係者の多くも、「米国が韓国を軽視するなら、中国ともっと緊密になればよい。そうすれば米国は韓国の重要性を見直すだろう」と本気で思っているので、米国が譲歩しない限りチキンレースのように中国傾斜が加速しかねないのが現状です。


 米国も韓国の行動に苛立ちながらも、完全に中国陣営に追いやるのは得策ではない、と考えているはずですから、余計に頭を抱えているのでしょうね。

 そして、米韓同盟がこうした脆弱さを抱えていることをお見通しの中国は、朴槿恵大統領の目の前に「南北首脳会談の斡旋」などのニンジンをぶら下げながら、在韓米軍への高高度ミサイル防衛(THAAD)配備拒否や、中国主導のアジア投資銀行への韓国参加を受け入れるように圧力を加えてくるのでしょう。

 米国は過去には、2002年のような反米感情爆発を警戒してきましたが、オバマ政権が「韓国人の怖さ」をどの程度認識しているかはよく分かりませんね。


posted by 永遠の旅行者 at 18:42 | ソウル ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 米大使襲撃 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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