イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループが日本人2人を人質にとり、殺害を警告して身代金2億ドルを要求した事件。
人質のうち、湯川遥菜さん(42)を殺害したとみられる画像と音声をインターネット上に配信したことを受け、安倍首相はNHK番組で、画像に関し「信ぴょう性が高いと言わざるを得ない」と述べました。
首相は「許すことのできない暴挙で強い憤りを覚える」とし、「断固として非難する」と語りました。
状況はかなり厳しくなっていますね。
ところで今回のテロ事件では、2人とも危険を承知でシリア内のイスラム国支配地域に足を踏み入れたようなので、みなさんは「自分とは関係ない別世界の話」と思ってはいませんか?
でも、少し考えてみてください。
今月7日にフランスで起きた連続テロ事件をめぐり、全世界に衝撃が走りましたが、容疑者はアルジェリア系フランス人。
イスラムを名乗る過激派や過激思想に感化された自国民による「内なるテロ」はフランスだけでなく、米国やカナダ、オーストラリアなど先進国にじわりと広がっています。
欧米社会の場合、移民の増加と、国内の経済格差拡大が、社会に強い不満や疑問を持つ人々を過激思想で染める温床となり、移民2世や下流の若者をテロリズムに追いやっているとの指摘も説得力があります。
日本は移民の大量受け入れに門戸を閉ざしているため、「欧米とは事情が異なる」という意見もありますが、「格差拡大」は極めて深刻化しており、社会への深い絶望と被差別意識をに陥った者による「内なるテロ」を生む危険性は排除できません。
フランスの事態は、欧米のみならず、日本にとっても「今そこにある危機」なのです。
さらに、安倍政権になって国際社会での日本のプレゼンスが再び高まっていることは、日本経済の活性化に役立つ一方で、日本国と日本人を標的にするテロを誘発するリスクを増大させているのも間違いありません。
「積極的平和外交」を旗印にした安倍外交は、日本から遠く離れた中東地域などへの関与も従来になく深めることになり、現地の民族や国家、宗教のの紛争に絡んで、いやおうなく立ち位置を問われます。
今回の日本人人質事件は、単なる身代金目的ではなく、「対テロ戦」を闘う米国主導の有志国連合から日本を脱落させるとともに、各国の結束を揺さぶる狙いがあったことは確実です。
まさに自衛隊のイラク派遣とアフガンでの米軍に対する海上給油支援活動などを通じ、中東やイスラム世界で日本の軍事的なプレゼンスが上昇してきた歴史を背景に、安倍首相の中東外交で「日本」が一段と注目を浴びたことが事件の引き金になったのは事実でしょう。
このことは、例え観光客であっても、日本人がテロリストやイスラム過激派に拉致され、人質として利用される危険性が非常に増していることを示唆しています。
旅行会社のパックツアーはともかくとして、個人旅行であまりにはしゃぎすぎ、「無謀な行動」を取らないよう気をつけることが、ますます求められます。
旅行前に、観光スポットを調べるだけでなく、現地の一般的な治安情勢やテロ組織の動向、危険な地域に関する情報、外国人が巻き込まれた過去の犯罪事例などをしっかり把握することが、何より重要なのは言うまでもありません。
中東以外の地域であっても、少なくとも危険とされる場所や地域に現地ガイドなしに立ち入らないようにし、常に万一の事態を防ぐ工夫を心がけるようにすべきです。